共同研究・競争的資金等の研究課題 - 青木 高明
-
人口と環境の数理地理モデリング,その他,京都大学数理解析研究所 共同研究(グループ型 A),国内共同研究,2024年06月
-
データ駆動アプローチによる都市変容機構の解明,基盤研究(B),国内共同研究,2024年04月 ~ 2027年03月
-
GPS位置情報分析における適切な空間スケールの推定手法の開発と実証実験,基盤研究(C),国内共同研究,2024年04月 ~ 2027年03月
-
数理地理モデリングによる都市形成『実験』環境の開発,学術変革領域研究(A),2024年04月 ~ 2026年03月
-
産業連関分析とネットワーク科学の融合アプローチによる地域内経済循環構造の解明,その他,挑戦的研究(萌芽),2022年06月 ~ 2025年03月,日本学術振興会
-
原シルクロードの形成-中央アジア山岳地帯の初期開発史に関する総合研究-,基盤研究(A),2021年04月 ~ 2026年03月,日本学術振興会
-
人流ネットワークに特化した数理解析基盤の整備とその応用,基盤研究(B),国内共同研究,2021年04月 ~ 2024年03月,日本学術振興会
本研究の目的は、人流の特殊性を考慮したネットワーク解析の基盤を整備してGPSなどの大規模人流データに適用するとともに、データに基づいて人流の数理モデルを提案し、外的な変化が人流ネットワークに与える影響の解析・予測を行うことである。
この目的を達成するために、2021年度は、(1)人流ネットワークが持つと考えられる特徴を定量化するための検討、(2)人流の生データを本研究のネットワーク解析に用いるための集計方法についての検討、(3)ホッジ=小平分解による人流ネットワークの分析、および、(4)本課題で分析する人流経時変化の対象の検討を行った。
(1)に関して、人流は強い周期性があり、それゆえにマルコフ性も満たされないことを改めて確認した。その特徴を捉えるために、(2)として、居住地ごとにOrigin-Destination行列を計算する方法が適切であることを大規模人流データを用いて確認した。実際に集計を行うと、個人情報保護のために秘匿が発生するが、秘匿率を抑えることのできる集計サイズの検討を行った。これらの結果により、本課題での人流ネットワーク構成手法を決定した。
(3)においては、パーソントリップデータを用いてホッジ=小平分解が人流ネットワークに対して適用できることを確認し、分解によって得られた特徴量が周辺地域と比べて特異的な値を持つ自治体を明らかにした。(4)に関しては、現在進行中の事象かつ世界的にも影響が大きい、COVID-19による人流変化を対象とすることに決定した。
人流ネットワークのホッジ=小平分解の結果は学会等で報告を行うとともに論文を執筆し投稿するとともにarXivにて公開した。特にCSIS DAYS2021においては優秀共同研究発表賞を受賞するなど、高い評価を受けた。 -
アンケートの問い方を変える:ネットワーク科学を活用した自由記述式の統計分類法,その他,挑戦的研究(萌芽),2018年06月 ~ 2021年03月,日本学術振興会
意思決定に際して「人々の意見や考え・思いを聞きたい」という社会ニーズがある。アンケート調査は社会調査の基盤技術として、広く社会的に利用され、新商品の開発や政策決定に役立てられている。アンケートによる質問には選択肢回答方式と自由記述回答方式の2つがある。特に自由記述式では選択肢に囚われない、多様な意見を集めることが可能である。一方その統計分析には、分析者が文章を精読し、数のグループに分類する(コード化)等の処理が必要とされ、大規模アンケートにおいては実質的に利用困難となっている。
本研究の目的はこの困難を克服し、回答者の「生の意見」という非標準データの統計分析法を開発することである。提案法は、(1)通常の自由回答方式の質問と回答を実施、 (2)過去に得られた回答リストを提示し、自分の意見と「似た/似ていない」を選択し回答させる。この2ステップの回答から、意見が「似た・似ていない」の関係で繋がったネットワークを構築する。ネットワーク科学のコミュニティ検出法を応用し、似た意見のグループを自動抽出し,多様な自由記述を複数グループに分類する。この分類は名義変量として選択肢回答と同様にクロス表分析や回帰分析などの統計解析が可能である。
今年度の研究実績として、(1) 改良したWebアンケートシステムを利用し、トライアル調査を実施した。トライアル調査の目的の一つは,意見ネットワーク構造の特徴把握である.トライアルでは,似た意見として選択されるケースが少なく,スパース性が高い結果となった. (2) 自然言語解析などの他の手法との比較検討を実施した。近年発展が進んでいる自然言語解析の手法について、性能比較を実施した。これらの成果は、論文にまとめて発表予定である。 -
江戸期石高データに潜む数理構造の解明,基盤研究(C),2014年07月 ~ 2018年03月,日本学術振興会
本課題の目的は,江戸期の石高・人口データ等を元に当時の人口動態・生産システムを統計・ネットワーク科学のアプローチから理解することである.研究背景として,特定地域を包括的に叙述する「地誌」の研究があり,特に近世江戸期について日本は世界史的に類を見ないほどの史料がある.一方これらは叙述記録であり,直接的な比較や解析が難しい.そこで本研究では村落間の繋がりをグラフとして記述し,コミュニティ検出解析する事で,村落クラスタを同定した.村落クラスタに注目することで,史料間の比較やその歴史変化を論じることが可能となる.
-
対流と熱の伝わり方の混同による誤概念の考察とその克服のための理科実験教材開発,基盤研究(B),2013年04月 ~ 2016年03月,日本学術振興会
ものの温まり方の学習教材に、最近安価になり導入しやすくなったサーモグラフィーを利用しようという試みを行った。サーモグラフィー特有の性質のため、実験教材には独自の工夫を加える必要があったものの、物質の動き(水の熱対流)とあたたまり方そのもの(熱の伝達)が異なった振る舞いをする事を見せる教材を作り、有効性を確かめたところわずか1割という低い定着率が9割に劇的に増大した。
-
動的変化するネットワークと結合力学系との相互作用が生む秩序化へのダイナミクス,若手研究(B),2012年04月 ~ 2016年03月,日本学術振興会
ネットワークという言葉は、複雑に関係し合う「繋がり」を指す用語として広く利用されている。このような繋がりは固定されたものではない。むしろ、状態に応じて動的に変化しうる。この自由度の高い多様な繋がりは、どのように秩序化され形成されているのか。本課題では、人や資金,情報などといった資源がネットワーク上を拡散・輸送されるプロセスと、その資源量に連動して動的変化するネットワークを力学モデルとして導入し、ネットワーク自体の形成過程を考察した。結果,このモデルは実データにおいて観察されているジップ則を再現すると同時に、この力学系がカオス解を持ち、非定常的に各ノードが栄枯盛衰を繰り返すことを発見した.
-
異なる集団間のコミュニケーションが生み出す内部ダイナミクスの変化,その他,新学術領域研究(研究領域提案型),2012年04月 ~ 2014年03月,日本学術振興会
本課題の目的は,シナプス可塑性によるネットワークダイナミクスの理解である.我々の脳は,コミュニケーションによる経験を経て時々刻々と変化する.それを支える神経基盤はシナプス可塑性だが,シングルシナプスレベルの研究と比べて,ネットワークレベルにおける可塑性の効果は未解明な点が多い.なぜなら,神経ネットワークを神経細胞の結合系とみたとき,可塑性によってシステム内の相互作用関係が時間と共に変化していくためである.このような結合力学系の解明には,従来の力学系理論や統計力学からの拡張が必要である.
本年は,昨年度導入した可塑性を持つ振動子ネットワークモデルをベースに,Regular-spiking neuron等の電気生理学的特性がネットワーク可塑性に与える効果を調べた.結果,タイプ1ニューロンに多く見られるPRCのゼロ次モード(定数項)が大きな役割を持つことを発見した.これは位相振動子系における従来研究において,ゼロ次モードを無視できたことと大きな差である.実際に,このゼロ次モードの影響が大きくなるにつれて,均一な神経細胞集団の中からでも,自発的に同期したクラスタ群が階層構造を形成し,最終的には複数周期のヘテロな集団に転移することを発見した.この結果はシナプス可塑性に基づき,均一な集団からでも,振動周期が異なる集団への分化することが起こりえることを示している.さらにこの転移について解析を行った結果,複数リズム集団への転移点となるゼロ次モードの強度についても,見積もることができた. -
素子のダイナミクスとネットワーク構造の動的関係性と機能発現,特別研究員奨励費,2008年 ~ 2010年,日本学術振興会
物流・交通、電力網やInternetに代表される通信ネットワークなど、大規模なネットワークシステムは我々の社会を支える重要なインフラとして、その重要度をさらに増している。近年の研究により、これらの大規模ネットワークは共通した構造特性(スケールフリー構造)を有することが発見され、研究課題となっている。従来では、スケールフリー構造は"Rich-gets-Richer"という経験的ルールを導入することで現象論的に説明されてきたが、依然ネットワーク構造がもつシステムとしての機能的意味や、スケールフリー構造の発生過程については未知の点が多く残っている。
これに答えるべく本研究では、ネットワーク上の資源(人・情報パケット・資金)の拡散過程について注目し、資源に依存して形成されるネットワークダイナミクスを単純な力学モデルとして定式化した。結果として、拡散過程と重み成長過程の共変化過程によって、自己組織的にスケールフリー構造が形成されることを発見した。さらにノード強度に関して閉じた近似方程式を導出し、資源の幕分布が形成される条件を明らかにした。
大規模ネットワーク上の拡散過程は、現代社会での伝染病伝播や、ソーシャルネットワーク上の噂の拡散過程、効率的なパケット通信などの諸問題に関わる基礎として重要である。本研究課題ではこのような拡散過程を素子のダイナミクスとして、ネットワーク構造形成が行われるとき自発的にスケールフリー構造が発現することが示した。この結果は、ネットワーク構造の機能理解を進める上で重要である。